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「永遠のソール・ライター」展

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数年前、たまたま東京へ遊びに行ったときに地下鉄の駅構内で偶然見たポスターに一目惚れ、それ以来ずっと”本物”の作品を見たいと願っていたソール・ライター。新年早々新たに回顧展がスタートするのを知って機会をうかがい続け、先日ようやく行ってきました。日曜午後の大混雑している渋谷のスクランブル交差点をよたよたと横切り、Bunkamuraへ。シーンとした会場内を入場とともに並びながら進むような状態ではありましたが、おかげさまで一つひとつじっくり作品と向き合うことができました。

書籍では何度か目にはしていましたが、やっぱり本物は全然違う。色といい、透明感といい、印刷とは全く違います。あまりにも素敵で思わず涙ぐんでしまった作品も。どれもこれも素敵なんですけど、一番胸を打たれたのは「歩道」という作品。これは全く私個人のプライベートな経験からきた感情ですが、私自身が子どもの頃に雨の日、自宅の二階の窓を見て感じた何かを思い起こす作品だったのです。一気にあの頃の感受性がよみがえったようなそんな錯覚がして、胸がいっぱいになって作品の前に立ち尽くしてしまいました。彼の作品にはなぜかとても感情を揺さぶられます。一枚の写真にたくさんの物語があるように見えるからでしょうか。

窓越しに見える外の風景に映り込む内側の風景だったり、その逆だったり。高架橋のすき間から撮ったり、大きなひさしの下から撮った遠くの風景だったり。一枚の中に幾通りもの見方ができるので一枚見ているだけで空想が広がるのです。絵のような写真。

ソール・ライターはもともと絵描きを目指していたので、彼の絵も展示されていましたが、その絵がまるで彼の写真そのものであることに気づいて驚きました。絵が先でその後写真を撮り始めたわけですが、彼の中ではもともと見えているものがあって、それが最初は絵だったけどその後カメラを手にし、写真という形で昇華された、カメラは彼が出会うべくして出会ったツールだったのではないかと思えます。

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展示の最後の方、彼の言葉で「成功より愛を選ぶ」みたいなフレーズがあり、ソール・ライターの人生を自ら謳っているような気がしました。勝手に呼ばせていただけるのであれば、愛の写真家、ソール・ライター。

お約束のお土産コーナー。私、作品展を見にきてこんなにこの種のコーナーで時間を使ったことはないかもしれません。見ればみるほど欲しくなって選ぶのがとても大変でした。その割に買ってこなかったことをいまだ後悔しているものがありまして。はぁ、あのペーパーウエイト、なぜ買ってこなかったのかしら。

会期は3月8日まで。もう一度、行きたいと思っています。






by zizo_cafe | 2020-02-12 00:14 | アート探訪